現在我が国で用いられているHbA1c値の表記はJDS(Japan Diabetes Society)値で、日本以外のほとんどの国々で臨床・学術に広く用いられているNGSP(National Glycohemoglobin Standardization Program)値と比較し、約0.4%低値を示すことが明らかとなっています。この問題を解決すべく日本糖尿病学会は、「日常臨床及び特定検診・保健指導」において、今後は NGSP 値を用いて糖尿病の診断を行うことになりました。
【 特定検診・保健指導 】
システム変更や保健指導上の問題を避けるため、2012年4月1日〜2012年3月31日の期間は、受信者への結果通知及び保険者への結果報告のいずれも従来通り JDS 値のみを用いる。
【 糖尿病の診断 】
2012年4月1日以降は、NGSP 値を用いて診断し、6.0%以上を糖尿病が否定できない、6.5%以上を糖尿病が強く疑われるとする。
【佐藤寿一クリニックでの HbA1c 値の表記】
佐藤寿一クリニックでは、日本糖尿病学会の指針に準じ、2012年4月2日より「HbA1c」値の表記を下記の通りNDSP値とJDS値を併記いたします。
項目名称 |
検査方法 |
基準値 |
備 考 |
HbA1c値(NGSP) |
ラテックス 凝集法 |
4.6〜6.2 |
5.6以上6.1未満(NGSP)は糖尿病が否定できないので糖の負荷テストを行う |
HbA1c値(JDS) |
ラテックス 凝集法(計算値) |
4.3〜5.8 |
* NGSP値とJDS値の換算
NGSP値とJDS値は、以下の式で相互に正式な換算が可能です。
NGSP値(%)=1.02×JDS値(%)+0.25%
JDS値(%)=0.980×NGSP値(%)−0.245%
【 HbA1c値とは?】
血液検査の検査結果の中に「HbA1c」(ヘモグロビン・エイワンシー)という項目があります。これは、自分自身の血統状態を知る上で非常に重要な数値の一つで、糖尿病の診断にも使われます。
ヘモグロビン(Hb)は、血液の赤血球に含まれているタンパク質の一種で、酸素と結合して酸素を全身に送る役目をしています。しかし、ヘモグロビン(Hb)は血管内の余分なブドウ糖と結合するという性質も持っていて、高血糖状態が長期間続くと、ヘモグロビン(Hb)は余分なブドウ糖と結合していきます。その結合したものがグリコヘモグロビンです。このグリコヘモグロビンには何種類かあり、糖尿病と密接な関係を有するのが「HbA1c」です。
通常、赤血球の寿命は4ヶ月と言われています。赤血球はこの間ずっと体内を巡って血管内のブドウ糖と少しずつ結びつきます。高血糖すなわち余っている糖が多ければ多いほど結びつきが増えグリコヘモグロビン(HbA1c)も多くなるわけです。
「HbA1c」値は、赤血球の寿命の半分くらいにあたる時期の血糖値の平均を表すので、血液検査での検査数値は1〜2ヶ月前の血糖の状態を推定できることになります。「血糖値」は、あくまでもその血液検査をした時の血糖状態で、食前・食後によっても違ってくるので、「HbA1c」値の方がより正確な血糖状態を教えてくれます。
「HbA1c 」(JDS)値は、5.8%以下であれば正常とされていますが、6.5%を超えた状態が長く続くと色々な合併症を起こすと言われています。